名著です。この種の総括的文献(個々の体験談等ではなく)では作者がどれだけ客観的にデータを収集し、個人的感情なしで伝えるかということが極めて重要ですが、林博史氏はこの目的を確実に達成しています。BC級戦犯と戦後の裁判に関して知りたい方には是非読んでいただきたいと思います。本書はBC級戦犯裁判という限定した内容でありながら、氏の求めるところは真の平和であり、そして日本社会に歴然として残る責任不在社会への警鐘であることが、最後に伝わってくるでしょう。
最近、加藤哲太郎氏原作の
私は貝になりたい―あるBC級戦犯の叫び
が再び映画化され、BC級戦犯を知らなかった方々がこの問題を認識するようになりました。しかしあのドラマ(
私は貝になりたい (朝日文庫)
)は加藤氏が巣鴨プリズンの中で訴えた本来の意図を離れ、また主人公を二等兵とするなど事実ではない要素を含んでいることを知っている人はどれだけいるでしょうか? 林氏のこの著作は「私は貝になりたい」の求めているところにまで言及しています。本書は単にBC級戦犯裁判に関する調査結果に基づいた総括的著作の枠組みを超えた平和を求める訴えであり、またその中で日本の果たすべき役割を論じた名著といえるのではないでしょうか。
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BC級戦犯裁判 (岩波新書 新赤版 952) 新書 – 2005/6/21
林 博史
(著)
- 本の長さ231ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2005/6/21
- ISBN-104004309522
- ISBN-13978-4004309529
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2005/6/21)
- 発売日 : 2005/6/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 231ページ
- ISBN-10 : 4004309522
- ISBN-13 : 978-4004309529
- Amazon 売れ筋ランキング: - 131,120位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2009年1月11日に日本でレビュー済み
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2008年7月7日に日本でレビュー済み
ただ単に「BC級戦犯裁判」にとどまらず、「大日本帝国」という「国家システム」にまでメスを入れた名著です。しかもここが重要なのですが判り易くて読みやすい。名著でしょう。
2013年8月15日に日本でレビュー済み
私は「BC級戦犯事例としてのスマラン事件」を見る事で、日本軍の慰安婦制度により、現地女性の強姦抑制が効果的になされていた事を逆説的に証明した。
300万程の日本軍将兵の中で強姦・強制売春で立件されたのは極僅かであった。
(スマラン事件のみと前回書いたのは間違い。訂正します。この本のP144−148にいくつか他のケースが載っている。但し、私の立論の大筋は変わらない。)
BC級裁判ではおよそ5700人が裁かれたと言われる。うち死刑は934人とのこと。何れもこの本による数字。
この本には上にあげた情報以外にも様々な情報が載っており有益なものが多い。
但しこの著者の「法の基本認識」については疑問な点が多い。
例を挙げると・・・P130である。「法による裁きは何よりも当事者による報復をやめさせるという働きがある。」という極めて核心的な「法による裁き」の役割(秩序維持・紛争限局など)に触れながら、一方でフィリピンでの住民虐殺の件であるフィリピン人の言い分を肯定的に紹介している。P179「告発された虐殺の場所が違っていたにせよ別のところでフィリピン人を殺したことに変わりはない。」と。
滅茶苦茶である。フィリピン人を殺したのが日本軍人である以上「どの日本軍人でも」裁かれるべきだ、と言っているのと同じである。
このような刑法の個人責任という原則を無視した発言を容認するようなメンタリテイーは前近代的なものである。
歴史学者はデータの発掘・整理は得意でも、意見・主張・示唆・展望となるとからっきし出鱈目である。
300万程の日本軍将兵の中で強姦・強制売春で立件されたのは極僅かであった。
(スマラン事件のみと前回書いたのは間違い。訂正します。この本のP144−148にいくつか他のケースが載っている。但し、私の立論の大筋は変わらない。)
BC級裁判ではおよそ5700人が裁かれたと言われる。うち死刑は934人とのこと。何れもこの本による数字。
この本には上にあげた情報以外にも様々な情報が載っており有益なものが多い。
但しこの著者の「法の基本認識」については疑問な点が多い。
例を挙げると・・・P130である。「法による裁きは何よりも当事者による報復をやめさせるという働きがある。」という極めて核心的な「法による裁き」の役割(秩序維持・紛争限局など)に触れながら、一方でフィリピンでの住民虐殺の件であるフィリピン人の言い分を肯定的に紹介している。P179「告発された虐殺の場所が違っていたにせよ別のところでフィリピン人を殺したことに変わりはない。」と。
滅茶苦茶である。フィリピン人を殺したのが日本軍人である以上「どの日本軍人でも」裁かれるべきだ、と言っているのと同じである。
このような刑法の個人責任という原則を無視した発言を容認するようなメンタリテイーは前近代的なものである。
歴史学者はデータの発掘・整理は得意でも、意見・主張・示唆・展望となるとからっきし出鱈目である。
2005年10月22日に日本でレビュー済み
この本の評価は非常に難しい。私も何度も読み直したが、正直言ってもっとBC級戦犯については深く知らなければならないと思う。むしろ、A級戦犯の問題より根深い問題点があるとおもう。
この本に書かれていることを鵜呑みにするのは危険だが、かといって我々が無視することができない重要な事項が書かれている。
私が否定的に思う点を何点か記述する。①著者は若干しか述べていないが、事後法による裁判、そしてその当時の国際法にのっとってなされたものかどうかの記述がほとんどない。②三光事件、南京事件および731部隊については、連合国側(主に中国)の意見のみで判断している。、むしろ近年の研究によってそのほとんどが、裁判がなされた当時とは異なっていたことは明白である。③現地人に対する処刑等であるが、当時華僑勢力を中心としたゲリラ活動は当時の国際法的には違法であり、処刑もやむなしとしていた。④本書の中で著者が引用している文献のなかに、日本のいわゆる反日親北朝鮮団体の意見が多く採用されている。・・・等々である。
かといって、BC級戦犯は実際にかなりあっただろうし、現地住民及び捕虜に対する残虐非道な行為は旧日本軍及びその軍属にあったであろう。また、その根拠となる文献や被害者の体験を著者はよく調査し述べている。この点を評価したい。また、裁く側の問題もよく鑑みている。そして、最大の課題として、連合国側の戦犯についてや第二次世界大戦(大東亜戦争)以降の戦争において、戦犯の取り扱いについて疑問を呈している(特に対イラクに対して)。
今からこの本を読む方には、この本の記述をまるまる鵜呑みにするのではなく、この本に書かれていることを十分自分なりに考え、検証して欲しい。そして、大東亜戦争について深く考え、決して否定的だけではなく肯定的だけでもなく、自分なりの意見(価値観)を持って欲しい。
この本に書かれていることを鵜呑みにするのは危険だが、かといって我々が無視することができない重要な事項が書かれている。
私が否定的に思う点を何点か記述する。①著者は若干しか述べていないが、事後法による裁判、そしてその当時の国際法にのっとってなされたものかどうかの記述がほとんどない。②三光事件、南京事件および731部隊については、連合国側(主に中国)の意見のみで判断している。、むしろ近年の研究によってそのほとんどが、裁判がなされた当時とは異なっていたことは明白である。③現地人に対する処刑等であるが、当時華僑勢力を中心としたゲリラ活動は当時の国際法的には違法であり、処刑もやむなしとしていた。④本書の中で著者が引用している文献のなかに、日本のいわゆる反日親北朝鮮団体の意見が多く採用されている。・・・等々である。
かといって、BC級戦犯は実際にかなりあっただろうし、現地住民及び捕虜に対する残虐非道な行為は旧日本軍及びその軍属にあったであろう。また、その根拠となる文献や被害者の体験を著者はよく調査し述べている。この点を評価したい。また、裁く側の問題もよく鑑みている。そして、最大の課題として、連合国側の戦犯についてや第二次世界大戦(大東亜戦争)以降の戦争において、戦犯の取り扱いについて疑問を呈している(特に対イラクに対して)。
今からこの本を読む方には、この本の記述をまるまる鵜呑みにするのではなく、この本に書かれていることを十分自分なりに考え、検証して欲しい。そして、大東亜戦争について深く考え、決して否定的だけではなく肯定的だけでもなく、自分なりの意見(価値観)を持って欲しい。
2005年9月24日に日本でレビュー済み
戦犯としては、A級戦犯が最も重大な罪に問われているので、戦争犯罪・戦争裁判に関わる関心もまずはA級戦犯に向くのだが、そこで問われる「平和に対する罪」が実は私にはうまく飲み込めない。特に事後的に作られた法によって裁かれる点が特にわかりにくい。
それに引き換え、B級戦犯は「通例の戦争犯罪」つまり、捕虜を虐待したり無抵抗の非戦闘員を殺した罪などだから、何が裁かれているのかはっきりしていて、事実認定も比較的容易だ。罪を犯した側が、それを悪いことだと意識していたかどうか(戦時においてはやむをえないと考えていたかもしれない)はまた別だが。
BC級戦犯裁判を通じて、そうした虐殺や虐待の事実が認定され、それを通じてまた大東亜戦争(本書の主題が日本帝国軍人の裁判だからこう呼ぶが)でどんな残虐行為が行われたかにも想像がつく。
そうしたことから、本書が示すBC級戦犯裁判の総括が示す資料は貴重だ。また多くの認定されていない(できない)事実が存在することをもふまえて、当時何が行われていて何が現在につながっているのかを認識することは、必要なことだと思う。
それに引き換え、B級戦犯は「通例の戦争犯罪」つまり、捕虜を虐待したり無抵抗の非戦闘員を殺した罪などだから、何が裁かれているのかはっきりしていて、事実認定も比較的容易だ。罪を犯した側が、それを悪いことだと意識していたかどうか(戦時においてはやむをえないと考えていたかもしれない)はまた別だが。
BC級戦犯裁判を通じて、そうした虐殺や虐待の事実が認定され、それを通じてまた大東亜戦争(本書の主題が日本帝国軍人の裁判だからこう呼ぶが)でどんな残虐行為が行われたかにも想像がつく。
そうしたことから、本書が示すBC級戦犯裁判の総括が示す資料は貴重だ。また多くの認定されていない(できない)事実が存在することをもふまえて、当時何が行われていて何が現在につながっているのかを認識することは、必要なことだと思う。